5月4日18時50分、雨はまだ降り続いていました。2度目の練習を終えた僕は、男塾先輩に電話しました。僕たちはホテルの部屋でしっかり練習していたことを告げ、
タイムアタックはこのまま部屋でやらないかと提案しました。ホテルの部屋で練習していたということに動揺したのか、先輩は一瞬、虚を突かれたようでしたが、すぐさま強気の言葉が返ってきました。「どうでしたか？ 倉西さん、練習は？ もう僕らは祝勝ですよ、はい、祝勝。いや、もう、いいんです、倉西さんたちがどこでどんな練習をしていようが、そんなことは関係ないんですよ、えぇ」。
いつになく高揚した男塾先輩の口調。祝勝？ 勝ったも同然だと言いたいのでしょうが、それなら「楽勝！」とか「余裕！」とか言えばいいわけです。祝勝って？ 祝勝って、なんだ？ その言葉に違和感を覚えながらも、僕は小さく笑いました。ヤツが、一瞬、押し黙ったこと、いつになく高揚した、ヤツの大好きなプロレスラーさんふうの口調であったこと、僕は見逃しませんでした。確かにヤツも充実した練習はしたのでしょう。Koheiさんがいっしょなのですから、それはまちがいがありません。それでも、ヤツの口をついて出た言葉は「祝勝」だったのです。僕は確信しました。先輩の心の奥のどこか、本人も自覚できないような奥深くに、敗北への恐怖が小さく、それでも確かに芽生えたことを。
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「OK、OK、わかったよ。じゃあ、部屋で待ってるから。フェアプレイの精神にのっとって、今から19時までは練習しないから。はいはい、じゃ、そういうことで」。
電話を切って、
ravenさんと二人、声をあげて笑いました。10分も経たずにKoheiさんと男塾先輩が部屋にやってきましたが、先輩はまだ興奮状態で、まるっきり試合の後のプロレスラーさん気取りです。勝った。勝った。すでに僕は小躍りしそうでした。いかにKoheiさんが凄腕のハンターさんであるといっても、この先輩と組んでは……実力の半分も発揮できないに違いありません。ただ唯一の不安は、練習中に何度も
ravenさんが口にした一言でした。
「相方は、どんな作戦でくるだろう……」。
今さら説明する必要もありませんが、この
タイムアタック企画の真実は、Koheiさん VS
ravenさんというJast 25’s内の戦いだったのです。僕と男塾先輩がなにかの役にたつなんてことはないわけですから、彼らそれぞれの作戦立案だけが勝敗を決する要因だったのです。そこに、僕が「部屋で練習する」というなんともセコイ作戦をプラスしたというだけのことです。ただ、この時点で、その卑怯な計略の分だけ、僕たちの方が勝利に近かったのは確かでした。
ちなみに2回目の練習の結果は、8分53秒でした。24秒の短縮です。最後までKoheiさんの作戦を気にしていた
ravenさんでしたが、10分を切り、そして9分を切ったことには一定の満足を感じられたようでした。でも……。ごめんなさい、ここではじめて、僕は告白します。2回目の練習前、僕、アイルーキッチンでごはん食べるの忘れてましたorz つまり、攻撃力は上がっていなかったのです。ごめんなさいごめんなさい。それでも9分を切って8分台に突入したのです。しかも、片一方はごはんを食べ忘れた僕だというのに……。
ravenさんが立てた作戦のものすごさに、鳥肌が立ちました。
