つながるということ、接続と検索その2

バベル
出演：ブラッド・ピット
2007年11月02日発売
12歳以上対象
投稿者の評価: 160点

まず最初にお断りしておきます。ネタバレ注意です。ですというか、ネタバレです。これから「バベル」を観ようという方は、このレビューは読まないでください。そういう方のために一言でまとめておきますと、僕はこの映画が好きです。以下にまとめるような視点で見ると、極めてテーマ性の強い「作品」だったのではないかと思います。いや、僕自身はその、観るまでは「世界的な規模で進行する悪の秘密結社の邪悪な陰謀にブラピと役所広司が挑む」映画だと思ってました、何故かorz　全然、違いましたね。以下、ネタバレの続きです。この映画のキーワードをもう1つ挙げるとすれば、それは「砂漠」です。言うまでもなく北アフリカのモロッコは砂漠の国です。砂漠は、人が生きていくこと自体にとって過酷な条件でもあります。そして、不毛の土地です。一度失いかけた夫婦のつながりを取り戻すために、「二人きりになりたくて」この土地への旅行を選んだブラッド・ピット（演じるだんな）の選択は、間違いではありませんでした。砂漠では、二人でお互いを見つめあい、話しあうしか、やることがないのですから。ただ、そこで一発の銃弾から事件が起こり、砂漠の過酷さを見せつけられます。出血多量で瀕死の状態にある妻を抱えたまま、電話がある村に行くだけでも数時間、結局、医者がやってくるまでに、さらに数時間かかったにもかかわらず、やってきたのは獣医、そして「テロ攻撃の可能性」に反応した政治によって、救急ヘリすら派遣されません。この現代にありながら、こんなにもつながらない土地。つながらないという恐怖は、想像を絶するものがあります。アメリカとメキシコの国境地帯に広がるのも砂漠です。家族との幸せなつながりから一転、国境警備隊に追われる身となったベビーシッターの女性は、それでも助けを求めて砂漠をさまよいます。人間が、その身体を使って歩くということのスピード感のなさ、車一台なかなか通らない、隔絶された土地。カメラは、執拗に女性の姿を捉え続け、最終的に国境警備隊に拾われながら、子どもたちとのつながりは失われ、強制送還される姿を描いていきます。人と人のつながりは、法によって裁かれるわけですが、それを失わせたのは砂漠です。不毛な砂漠に、不毛な国境線が引かれ、人と人のつながりは、いとも簡単に失われてしまいます。まるでGoogleで検索したかのように、役所広司が事件で使用されたライフルの持ち主であることが割り出されます。もちろん、彼は事件には何の関係もなく、警察もただ、所有者だったことの確認にだけ訪れるのですが、東京も、結局は砂漠なのではないかと、僕には思えました（そういえば、内山田洋とクールファイブに「東京砂漠」という名曲がありますねw）。接続も検索も、いくらでも可能な都市、その過剰さも、ある意味、不毛です。少なくとも聾唖者である娘にとっては。砂漠は接続も検索も拒否する土地ですが、大都市はそのいずれも過剰に可能です。モロッコでもサンディエゴ～メキシコでも、登場人物たちは生きようとするのですが、東京の二人は、死のイメージを背景に描かれてもいます。生が砂漠化した土地。映画は、裸の娘を役所広司が抱きしめるシーンで終わります。つながりを取り戻そう、これから構築しようというメッセージがかすかに感じられますが、どこからどうみてもCG合成のチープな映像が、滑稽なまでの悲劇を描ききって、幕がおります。さらに長くなったので、さらに稿を改めます。