【鎌倉NIPPON 05】ジャーナリズムではなく

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20100628163344 @entrypostmanさんによるプレゼンテーションが終了し、質疑応答に入った。 「アップルはAppBankがやれない。私たちは、ここがやりたかった」(@entrypostmanさん)posted at 19:43:51 「競合はiTunesしかない。海外にもない。AppBankアプリがすごすぎるんだと思う。同じことはできないと、海外のメディアからも言われた」(@appbank君)posted at 19:44:58 質疑応答のテンポ、基調を作っていたのは、@appbank君だった。聴く人によっては「怒ってるのか?」と感じないこともないような、そんなぶっきらぼうな口調で、@appbank君はどんどん質問に答えていった。予定されていた時間を大幅に超過することが目に見えていたから、焦っていたのかもしれない。 「僕たちはジャーナリズムではありません。そんなプライドもありません」。 どういう質問に答えたものだったのかは記憶にないのだが、@appbank君が、ひときわ強い口調で、でも、短く言い切った。 「俺も10年前、そう言われた。その姿勢は、今も変わってません」。 はじめての試みだったので、かなり真剣に実況ツイートを入力し続けていたTweetDeckの画面に、Replyが飛び込んできた。ナタリーの@takuyaだった。彼は以前、電撃PlayStationで働いていて、僕の部下だったことがある。 10年前、2000年、PS2発売の年。確かにそうだ。確かに、僕は部下によくそう言ってダメ出しをしていた。 ジャーナリズムなんてものは学んだことがないのでわからないが、仮に新聞やTVの「報道」と呼ばれるものがジャーナリズムなのだとしたら、確実に僕は違うし、電撃PlayStationも違った。正しいことは正しいという以上には、まったくといっていいほど関心がない。こう書いてしまうと誤解を招くだろうが、真意はこうだ。ジャーナリズム、報道は、正しいことを伝える……ということを前提にしないと成り立たない。この点は、ゲームメディアだって同じだ。「○ボタンを押せばマリオがダッシュする」なんてことは、よほどふざけた企画でもないかぎり絶対に書かない。○ボタンはPlayStationのものだという時点でまちがいで、マリオがダッシュするのはBボタンを押した時だ。 問題は、そのあとにある。 電撃PlayStationは正しいことだけを書こうとしてきたが、報道やジャーナリズムは正しいことを書いたあとに、その「解釈」を加えようとする。わかりやすい言葉にすれば、「意見」というヤツだ。さらに言えば、その意見のために正しいことに制限を加えようとさえする。そうすることで、自らの正当性、ポジションを確保しようと動く。なぜ、そういう特性があるのかは、僕にはわからない。さすがに最近はいなくなったが、10年くらい前、記事のダメ出しをした時に、よく部下からこう言い返された。 「本当のことが書きたいんです」。 そんな愚かなことを言ってきた部下たちの主張を還元すると「そのソフトの悪いところ(≒本当のこと)も書きたい。自分たちはジャーナリズムではないのか?」ということだった。冗談ではなかった。ソフトには、いいところもあれば悪いところもある。それは当然だ。100%オールOKなゲームソフトなんて、ない。どうしても悪いところが見つからなければ、極論、「操作しなければ遊べない点が残念だ」とでもうそぶけばいい。それも立派な批判だ。ただ、そんなことを書いてどうすると言うのだろう。僕たちはPlayStationというゲームプラットフォームに拠って立っている専門メディアだ。力いっぱい、全力でPlayStationをもりあげていかなければならないのは言うまでもないことだ。そうしないと、ごはんが食べられなくなる。ウソをついてまで、欠点を美点としてまで書く必要はないから、悪いところしかないソフトは、紹介しなければ、載せなければいいだけだ。事実、それを選り分けるために電撃PlayStationは毎号、何本ものソフトをプレイし、長い長い会議を経て(最長8時間ということもあった)掲載タイトルを決定、それぞれの掲載スペースを決めている。特に90年代後半までの電撃PlayStationは、エンターテインメントとして、掲載ページ数でソフトのおもしろさを表現してきた(90年代後半までは、それができるくらいに毎週大量のソフトが新発売されていた)。 正しいことだけを書くということに集中できず、媒体としてポジションを確保することに汲々としなければいけないなら、電撃PlayStationはジャーナリズムなどにはなりたくなかった。提灯記事だらけだと言われる方が、まだマシだった。 「iPhoneアプリは儲かるのか? そう聞かれたら、僕は「iPhoneアプリは儲からないからやめた方がいいですよ」と答えてます。でも、僕が考えていることは、アプリがもっともっと受け入れられて、すごくたくさん売れて、AppStoreの規模が大きくなることです」 @appbank君の言葉を聞き、10年前の自分がまったく同じことを言っていたと@takuyaによって思い出させられ、僕は、なぜ自分が、数あるiPhone系ブログメディアの中からAppBankを選んだのか納得できた。AppBankは、初期の電撃PlayStationによく似ているのだ。「PVや部数といった獲得している規模に比べると、ずいぶん人数は少ない三十前後の男だけの集団である」「まったく休みなく、寝食も忘れてiPhoneのこと/PlayStationのことを考え続けている」「後発ながら、ジャンル第1位のポジションに到達し、それを維持している」……内部にいた(彼らは現在もそこに「いる」のだが、僕は基本的には引退した人間だ)人間にしかわからないことまで含めて数え上げれば、きりがないほどだ。そしてなにより、自分たちはジャーナリズムではないというスタンスを存在理由のレベルで持っていて、生き残るために、自分たちが拠って立つプラットフォームをもりあげることに、いろいろな犠牲を払って注力している。メディア論……というほどでもないのだが、このことについては後日、AppBankポッドキャストが収録され、配信されている。 また、この日のプレゼンテーションの模様は主要なIT系ネットメディアのほとんどで紹介され、大きな反響を呼んだ。もともとの規模が大きいのであまりそうは感じないのだが、アップルストア銀座という場所から発信したという点からも、AppBankiPhone業界に対してオフィシャルにデビューした瞬間だったとも言えるだろう。この春、雨後の筍のように続々と発刊されたiPhone情報誌で、彼らの名前が載っていないものはないくらいだ。 間にあってよかった。 銀座からの帰り道、素直にそう思った。AppBankは、必ず今以上の存在になる。大きさもそうだろうが、その性格や、果たす役割も変わっていくはずだ。ある程度の予備知識をもって、そのデビューの瞬間に立ち会うことができたのは幸いだった。彼らを追うことで、なにかの未来が透けて見えてくるはずだ。そう確信もした。 ちなみに、この日、@entrypostmanさんが着ていたTシャツには、大きく「鎌倉Japan」と書かれていた。これが、僕が@entrypostmanさんを「鎌倉のスティーブ・ジョブス」と呼ぶ理由であり、mobile ASCII掲載企画のタイトルの由来だ。 ※この文章はmobile ASCII掲載「鎌倉JAPAN」の取材記として書かれています。内容は、倉西自身の主観に基づくものです。
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