そんなになのか？ < 俺

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人生二度目の職務質問が終わっても、新幹線の発車時刻までにはまだ15分ほど時間がありました。僕は中央通路を離れ、書店に向かいました。それでも残り15分しかありませんから、じっくり本を選ぶことはできません。あの人の本があったら買おう、それともあの人にしようか、そんなことを考えながら、やや急ぎ足で歩いていました。 「ちょっといいかな、警察です」。 左手側から背の高い男が僕の正面に回り込み、さっきと同じIDを見せました。 さすがに僕がテキストライターだといっても、こんなシチュエーションで気の利いたことが言えるわけもありません。普段は、どちらかといえばティッシュを配る人にも、募金を求める人にも、避けられるキャラクターです。それがなぜか、警官には大人気です。どうしたものでしょう。 こういう日もある。 そう思うしかありません。 「いや、あの、さっき、そこで済ませました」。 「あ、そうですか、じゃあ、大丈夫です。失礼しました」。 僕の「済ませました」もどうかと思いますが、警官の「じゃあ、大丈夫」もどうでしょう？　新幹線に乗る人は全員職務質問を受けなければならないなら、この会話は成り立ちますが、そんな法はありません。僕の返答がよほどおかしかったのか、そそくさと立ち去った警官の後ろ姿、その肩が大きく揺れました。思わず笑ってしまったのでしょう。笑いたいのはこっちです。 なんとなく気が抜けてしまった僕は、書店に立ち寄るのをやめ、新幹線ホームに向かうことにしました。ただ、同じ通路を戻るのはやめました。別な通路を通れば、もう一回、声をかけられるかもしれない。「そうなったらおいしいな」という期待はあったのですが、残念ながら、二度あったことは、三度はありませんでした。

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