【狩られ道黒毛 2/2】1975年、夏。石川県金沢市、涌波二丁目。#MHP2G
※作者急病のため、今回の「狩られ道黒毛」は3年前にブログ公開された記事を収録いたします。
逃げられました。四角いリングの中で、手を伸ばしては逃げられ、また静寂が訪れ、そして手を伸ばしては逃げられということが続きました。
しまった!
うかつでした。コンクリートの塀と石ころは、密着しているわけがありません。石ころと石ころであれば、なんとなく隙間を埋めることもできていたのですが、コンクリートブロックと石ころが接している部分には、わずかながら隙間が生まれてしまいます。そいつの大きな身体が、その隙間に飛び込むのが見えました。
目的を達成しました。
信じられないことに、僕の身体は高速で反応していました。「しまった!」と思った瞬間には同時に右手が右に伸びていて、そいつの胴体を地面に押さえつけることができました。もしかすると、コンクリートブロックと石ころの隙間が細すぎて、そいつの胴体は入りきらず、一瞬、つっかえたところを僕に押さえられたのかもしれません。その刹那、僕とそいつの運命が交差しました。僕は押さえつけられてもがきながら、それでも威風堂々としたそいつの全身を眺めました。気がつかなかったのですが、僕との戦いの中で、そいつは尻尾を落としていました。僕は、その尻尾を探そうとはせず、いつも持ち歩いていた緑色の虫カゴに、そいつの巨体をおさめました。その中は、そいつにとっては狭すぎて、もう暴れることもしませんでした。
こんなに大きくて立派で、そして僕を苦しめた相手なのですが、母親にしてみればトカゲはトカゲです。家に持ち込むことは許されず、仕方なく、僕は虫カゴごと、そいつを家のポストに入れておきました。夜になって、帰宅した父親がポストをのぞいたらしく、僕に言いました。「あのトカゲ、大きいな」。僕はいかにそいつとの戦いが激しかったかを父親に語りました。父親は瓶ビールを飲みながら、その話を聞き、そして言いました。「あんなに大きなトカゲが、あんなにせまい虫カゴの中で、生きていけるわけがない。もし飼うのだとしても、飼育ケースだって、あの大きさじゃせまいだろう。誠一、考えてみてごらん。動物にはそれぞれ生きていくフィールドがあり、必要な広さがある。あのトカゲが生きていくのは、虫カゴの中じゃない」。こう書いてみると、本当は父親が何を言いたかったのか、今いちわからない気もしますが、僕はアパートの階段を下りてポストに向かい、昼間の激闘とは打って変わったあっさりさで、そいつを草むらに放しました。尻尾もなく、虫カゴの中では身体を丸めてぐったりしていたそいつは、勢いよく、草むらに消えていきました。
2007年、夏。砂漠、エリア5。
目の前でティガレックスが足を引きずりました。僕は大あわてで太刀を納め、その鼻面に回り込みました。アイテムは□ボタンでシビレ罠が出せるように、すでにセットしてありました。あまりに近くに設置しすぎて、ティガレックスの猛ダッシュを喰らってすっ転がりましたが、無事にヤツを罠にかけることができました。すっ転がりながらLボタン~□ボタン、起き上がる時には捕獲用麻酔玉がセットされていました。一発、二発、ヤツの顔面に投げつけました。
目的を達成しました。
尻尾を落とされ、両方の爪も顔面も破壊されたティガレックスが、あえなく倒れ込み、眠りにつきました。金沢生まれの少年は、東京で暮らす中年になりましたが、32年の時を越え、今日も知恵と勇気を振り絞ってトカゲを狩っています。
※まさか本気で完全コピペするとは思わなかったですよね?w もう何年? この連載を続けているのか覚えがないのですが、はじめてです。半コピペは以前、やったことがありますがw いや「w」じゃねぇだろうって話ですよねorz 反省に次ぐ猛省いたします。でも、このエピソード、うちの母が好きなんですよ。(株式会社アスキー・メディアワークス ゲームメディア主筆/倉西誠一 201006290853)
※この文章は電撃PlayStation 2010年07月09日発売号に掲載されたものです。