【鎌倉NIPPON 15】ユー・アー・マイ・フレンド

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[鎌倉] 「みなさま、こんにちは、AppBankニュース・セントラル、ユー・アー・マイ・フレンドのお時間がやってまいりました。今日も18時半から19時までの30分間の短いお時間ではありますが、お楽しみください。司会進行を務めさせていただきます、私、AppBankの村井でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします」。 平日毎日18時半から30分間、AppBankは「ツイットキャスティング」で生番組を配信している。不思議なもので、毎日見ていると「@entrypostmanさん、今日は調子悪そうだな」とか「今日もまた元気いっぱいだ」などと、そんなことを思うようにもなる。たぶん、このことにはなんの意味もないのだろうが、僕にとって18時半というのは絶妙に視聴可能な時間帯だ。なので、ほぼ毎日、欠かさず見ることができている。 インタビューから2日後、天気予報は雨だったのだが、その日の鎌倉は、日中、30度を超える快晴の真夏日だった。mobile ASCIIに掲載する写真を撮影するために、僕はその日、最も暑かったであろう14時台から3時間半、鎌倉市内を歩いて回っていた。鎌倉駅から銭洗弁天に登り、そのまま山沿いに樹ガーデンという空中庭園のようなすばらしいロケーションのカフェをめざしたのだが、見事に休業、しかたなく元きた道を鎌倉市役所の前を通って駅まで戻り、そこから今度は門前の参道を歩いて鶴岡八幡宮に向かい、100枚以上の写真を撮ってから、AppBankの事務所に入った。最後にツイットキャスティング中の模様を撮影しようと考えたのだが、配信開始まではまだ1時間以上あった。彼らのじゃまになるのは申し訳なかったのだが、僕はそれまでの時間、事務所にいさせてもらうことにした。 「倉西さん、このゲーム、やりました? これ、最近ハマってるんですよ、おもしろいんですよ。記事、書きたいんですけど、忙しくてなかなか書けないんですよ」。 普段は舌鋒鋭い@appbank君だが、やさしい一面も持っている。忙しいだろうに、疲れ切って事務所の畳の上に(遠慮なく)へたり込んだ僕に気をつかって2本のゲームを紹介してくれた。当然、おもしろい。その2本は今も、削除せずに僕のiPhoneにインストールされたままだが、僕も忙しくて(?)自分のブログに記事を書けていない。紹介したいのはやまやまなのだが……そういうタイトルなのだろうか……。 気がつくと18時25分。配信5分前になっていた。「5分前だよ」。僕は短く声をかけたのだが、誰もあわてる様子はない。2分くらい前になってようやく@toshism君が机の上のiPadを配信時の位置に置き直し、@kazuend君が「いつもこんなもんなんですよねぇ、僕ら、あわてないんですよねぇ」と笑いながら、部屋の中央でiPhoneをセッティングしはじめ、てきぱきと@entrypostmanさんにマイクや身体の向きを指示していった。細かなことなのだが、この配信はつながると同時に告知されているわけではない。配信を開始して10人程度のビューアーがついてから、ツイッターで配信開始が告知され、@entrypostmanさんがいつものあいさつをしてスタートする。その間、ほんの10秒程度のことなのだが、その間があるからこそ、配信を告知すると一気に120人前後のビューアーがつき、あたまから配信を楽しむことができるのだ。 表立った活動の中で、今、AppBankが最も注力しているのが、このツイットキャスティングによるライヴ配信と、アップルストア銀座でのiPhoneアプリ勉強会というイベントだ。iPhoneアプリ勉強会はまだユードーの南雲さんをスピーカーに迎えた第1回を終えたばかりだが、来場者が会場に入り切らず、多数の立ち見、座り見が出る大盛況だった。しかも、来場者のほとんどがiPhoneアプリをすでに開発しているか、あるいは開発を予定しているかというデベロッパー予備軍だった。 @entrypostmanさんがインタビューで語っていた通り、AppBankは、あらためてメディアとしての強化に乗り出し、より強固なコミュニティを築こうとしている。ツイットキャスティングで直接的に読者に語りかけ、iPhoneアプリ勉強会では開発者や意識の高いユーザーに語りかける。キーワードは、おそらくFace to Faceだ。直接、顔を見せる。直接、顔を見る。ノイズも多く含まれるかもしれないが、それが一番濃いコミュニケーションの第一歩だ。彼らがUStreamではなくツイットキャスティングを選んだのも、そういう理由だろう。彼らは決して、コミュニケーション方法としては効率の悪いブロードキャスティングは志向しない。1万人が見るかもしれないものよりは、100人が確実に見る方法を選ぶ。ツイッターと密接に連携したツイットキャスティングであれば、ビューアーがそのままリアルタイムに、ツイッター上で彼らがライヴ配信していること自体を広めてもくれる。 旧4大メディアであるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌は、その技術的な限界から規模の大を先に追わざるを得ない。電波媒体は視聴者の属性や特性など、まったく無視して番組を流さなければならない。誰が見るのか/聴くのか、さっぱりわからないからだ。視聴者を分けるとしても、せいぜい時間帯に気をつけるということくらいしかできない。雑誌はまだ小回りが利く方で、読者をもう少し細かく設定して、少し色のついたところをターゲットに作ることができる。それでもたいていの場合、ターゲットがはっきりして「層」と呼ぶことができる色の濃い読者群を獲得するまでには数年かかる。その段階に至らずに休刊(出版業界の事情として廃刊とは言わない)を迎える媒体も多い。PlayStationという90年代日本を代表する大ヒット商品に、エンターテインメントムーブメントに乗っかれたからこそ、電撃PlayStationは創刊から2年強で読者群の獲得に成功し、5年で確固たるポジションを確保することができた。その当時、僕の前の編集長、電撃PlayStationの創刊編集長はよくこう言っていた。 「どこに風が吹いているのか、吹きそうなのかを考えて、それを見つけたら、どうやって風に乗るか。そのことしか考えてなかった」。 多少の謙遜は含まれているだろうが、本当に、それくらい自信のない中で、僕たちは雑誌を作ってきたし、今も、作り続けている。 AppBankは、ソーシャルジェネレーションのネット媒体であることを活かし切って、色の濃いところから攻める。真っ白い紙に、一点、黒を落とす。それがじわりじわりと広がっていくのを追い、適切な方法で、その速度を早めもする。なんとなく灰色の部分を作って、その中から黒く染めるのに適した場所を探すなんて、そんなおかしな方法はとらない。ストレートに黒を落とし、それを広げていくだけだ。しかも、広げていく力も、自分たちの力だけに頼るのではない。真っ白い紙は、真っ白いままではいられない。いつのまにか、何色かに染まらなければならないのだ。AppBankの基本的な方法論は、旧4大メディアとは真逆のものだ。 「それでは@toshismにマイクを渡しましょう」。 @appbank君が、すかさず@toshism君の顔をどアップで映し出す。 「やめてくださいって。iPadの画面の方を撮ってくださいよ。なにアップにしてんですか」。 二人のやりとりは、すでにお約束のコントになっている。秀才キャラ/@toshism君の加入によって、AppBankはその存在の根源である記事に、ビジネス系アプリという新たな強みを加えることができた。なかなか魅力的なオリジナルタイトルが出てこないiPadゲームを尻目に、ビジネス系アプリは、iPadで順調に受け入れられている。まさにそのタイミングで、@toshism君はAppBank専属となった。これは計画なのか? 偶然なのか? もはやどちらでも、大きな問題ではない。 「僕は編集長として、AppBankはメンバー一人一人の顔が見えるメディアでありたいと考えています。顔のあるメディアということです。僕は@appbankでサイト名と同じですから、@entrypostman@kazuend@toshismといったメンバーの個性を際立たせていこうと思っています。キャラクターを打ち出していって、親しんでもらって、最終的にはそのへんの町のあんちゃんくらいの存在になれたらいいですね」(@appbank)。 彼らの活動が「町のあんちゃん」レベルではないことは言うまでもないが、そういう志向を持っているからこそ、できてしまうのかもしれないということは、僕も少しは初期の電撃PlayStationで学んだつもりだ。 結局のところ、僕はAppBankをメディア論で捉えようとしている。先にも書いたように、彼らと、僕が20年のゲームライター暮らしの大半を過ごした電撃PlayStationの初期の姿との間には、非常に多くの共通点がある。また、彼らが今後やろうとしていることのいくつかは、僕が以前、同じ問題意識を持って取り組んだこととも類似している。だが、彼らは僕らではない。彼らはメディア/コミュニティ/コンテンツといった3つの要素をうまく一体として立てることをめざす、次代のメディアだ。ここははっきりと、僕は区別している。それぞれの要素もまた、語り古された解釈で捉えてはいけない。彼らがメディアと呼ぶものは、僕が知るメディアとは異なるだろう。彼らが考えるコミュニティの在り方は、たぶん僕が経験したことのないものだろう。彼らが世に問うコンテンツもまた、僕の想像力では捉えられない要素(仕掛け?)を含むものだろう。 「そうなんだよなぁ、俺もそう思ってたんだよ」。 知らないなにかを知った時に、そう感じさせてもらえることほど、これからの時代、しあわせなことはないのかもしれない。 ※この文章はmobile ASCII掲載「鎌倉JAPAN」の取材記として書かれています。内容は、倉西自身の主観に基づくものです。
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