週末レビュー 「PERSONA3」 第3回
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PERSONA3 往復メール・第2回(20060630・0703)
この夏大注目のRPG「PERSONA3」は、7月13日発売です! というわけで、往復メールの第2回です。ちなみに、ですが。普段はこのブログ開設時のポリシーに従って、記事へのコメントは受けつけていませんが(トラックバックのみ、受け付けています)、この企画については広くファンの方々の御意見等をいただきたいと考えまして、コメントを受けつけるようにしています。もしよろしければ、どうぞ。ただし、当然ながらこちらが不適切と考えたコメントは予告なしに削除させていただきますので、あらかじめ御了承ください。さて、と。余計な前置きはそろそろいいですよね? では、どうぞ。
■第2往復 倉西→橋野さん
【件名】
「PERSONA3」の音楽と時間
【本文】
お世話になっております、電撃PlayStationの倉西です。
サンプルROM、順調にプレイさせていただいていますが、まだまだストーリーは進みません。どうしてもタルタロスに毎晩潜りに行きたくなってしまって……でも、コミュのことも気になるし……というジレンマは、たぶん橋野さんの思惑通りなんでしょうね。このゲームデザインの基本的なラインは成功していると思います。ちなみに僕はまず、陸上部に入りました。こう見えても、中学のころは陸上部に入っていまして、800m競走で県大会2位になりましたw
今日はちょっと音楽の話を書かせていただきます。音楽、いいですね。あの、プレゼンテーションをいただいた時は一瞬、「うるさいかな?」とも思ったのですが、実際にプレイをしていると全然そういうことはありません。むしろ、この画面のデザインと音楽の組み合わせは、これ以外ないんじゃないかと思うくらい。ちゃんと音楽が切れるところもあるし、普通のRPGに比べると過剰に鳴らすところもあるし。「歌」ものが多いことも特徴ですね。普通、セリフを読みながら歌ものが聴こえてくるとどうかと思うんですが、「P3」の場合は、そういうこともないですね。
この音楽の魅力はなんなんだろうと自問しながら、メジャーなところで言えばMadonnaの「Erotica」「Music」という2枚のアルバムを聴き直しています。iBookにiPod用のヘッドフォンをさして、iTunesで再生しています。この環境が、ちょっと意味があるのかなとか思ってみたり。
> 将来、起こるべき結果の白黒を、先延ばしにしながら過す時間が、
> 青春なのだとしたら、ゲームと言うのは、そういった心理の上でしか、
> その面白さを味わえないのかもしれませんね。
いわゆるハウスの発展した手法をポップの領域に持ってきたMadonna……って、ありきたりな解釈なのですが、「将来、起こるべき結果の白黒を、先延ばしにしながら過す時間」にはディープじゃないハウスが最適なのかもしれません。人間が生まれて最初に行われるのは、やっぱり何かの決定ですよね。性別だったり、名前だったり、誕生日だったり、血液型だったり。生まれた途端にその人の人生の時間が流れはじめて、人生の時間は「勝敗ライン」じゃないですが、何かを決定していく時間、その積み重ねで……。それに抗うことができないから、先延ばしに先延ばしにしていく。青春(恥ずかしい言葉ですね、やっぱり)って、何というか、第二次性徴期というくらいで、人間が二度目に誕生する時間であると考えれば、揺籃の音楽、子宮の音楽ともいわれるハウスの手法、テイストが「P3」には最適で、そして主人公と同じように、僕は外界をシャットアウトしてヘッドフォンでそれを聴きながら、このメールを書いています。
あ、なんかヘンな話になりましたね、すいませんorz 次回はちゃんとゲームのこと、書きます。
▲ 倉西誠一 Seiichi Kuranishi
■ 株式会社メディアワークス
● 電撃PlayStation編集部
× http://www.dengekionline.com
(2006年06月30日13時22分)
■第2往復 橋野さん→倉西
【件名】
フューチャーポップ…?
【本文】
お世話になっております。暑くなってきましたね…遂に7月です!
ソフト発売まで、あと10日ほどになりました。
先週、御社編集部の方々から、雑誌掲載インタビュー用の
取材を受けさせてもらったんですが、皆さん、かなりやり込んで頂いていて、
驚きました。話が尽きず、3時間近い取材でした(笑)←長くなってスイマセン;
来られた方の中には100時間以上もやり込んで頂いた方もおられて、
頂いた感想も、実に嬉しいものでした。
早く、一般ユーザーの方達の感想も聞きたいと、より一層、
発売が待ち遠しいこの頃です。
> 音楽、いいですね。
ありがとうございます。
madonna…ですか。懐かしいですね。実は僕もちょっと前、
深夜の音楽番組で流れていて、
懐かしさと新鮮さで、ベスト盤を買ってます(笑)。
> いわゆるハウスの発展した手法をポップの領域に持ってきた
> Madonna……って、ありきたりな解釈なのですが、「将来、起こるべき
> 結果の白黒を、先延ばしにしながら過す時間」にはディープじゃないハ
> ウスが最適なのかもしれません。
何がテクノで、何がハウスかとか…音楽ジャンルの成立背景などには、
疎いので、お話するのがしんどいのですが(笑)、
頂いたメールを切欠に、今作のサウンド設定に関して、
当社メインコンポーザーの目黒と少し、振り返ってみました。
今回、僕がサウンドにお願いしたことは、細かい話を除けば、
「好きにやって欲しい」ということだけでした(乱暴な指示ですねw)
言い訳…ではないんですが(笑)、目黒は、BGM制作のバックボーンに、
”ゲーム音楽的”な作り方を前提にしない男で、
だからこそ、ゼロから構築してもらうことで、
何か意外性のある、面白いものが出来るんじゃないかな…と思ったので
す。
これまでのサウンド制作は、作品のサウンドコンセプトを決める際、
何故、そういう音にするのか…という明確な理由が存在していましたが、
今回は、目黒の方で、制作途中の画面デザイン(特に動的なインターフェイス)
を見て直感的に、数曲のサンプルを作成しました。
そして、数曲が出来上がってから、結果的にサウンドの方向性がブレないように、
フューチャーポップ、斬新なアイデア、ジャズ的コードリフ、ボイス的ボーカルリフ…
など、幾つかのキーワードをメモしていった…ということです。
そうした試行錯誤の末に、作中に使われることになった楽曲は、
ハウスのようで、テクノのようで、また、それとは異質なもののようで…
という、説明がうまく出来ないものに仕上がった…というか、
あらゆるモノが交じり合った、可能性あるものになったというか。
何故、ゲームにうまく、これが乗ったのかを、今更ながらに考えてみると、
何かが完成に向かう途上にある状態(タロットでいうところの、ゼロ=”無”。
いわば、何にでもなれる”ワイルド”な状態)が、主人公がゲーム中で体験していく、
今作の物語世界と、必然的にマッチしたのかもしれません。
(ちょっと、これは言い過ぎですねw ご容赦ください)
”ディープでない、ハウス”というキーワードについて、
先延ばしにする時間というのは、軽視されるものではない…と目黒は言っています。
それを無駄で不要なものとするかどうかは、それを扱うプレイヤ次第でしょうし、
物語の終わりの方では、サウンドも相応に変わっていきます。
音楽については、シロウトで大したお話が出来ませんでした;
ともかく、ゲームっぽくない曲が、ゲームにうまくハマってくれるというのは、
作り手側としても、なかなか爽快なことですし、
それを実際のプレイで喜んでもらえて、ありがたく思います。
> 次回はちゃんとゲームのこと、書きます。
是非、よろしくお願いします(笑)。
では、次回のメールをお待ちしております。
2006/7/3 橋野桂