【MH3(トライ)開発秘話】#1 モンスター(その8)#MH3
(その7からの続き)
――マグマをまとうアグナコトルについてお願いします。
藤岡 「陸を活動の場とする海竜を作りたい」と思ったのがきっかけです。海のかわりにマグマということで、火山に出現することもすぐ決まりました。そこからさらに何かインパクトが出せないかと思っていたときに、天井と地面を激しく行き来する立体的な動きの演出が浮かんだので、いっそドリルみたいなクチバシにしてみたり。
――マグマが冷えたら肉質が固くなって、マグマに潜って出てきた直後は肉質が柔らかくなっているという、状況によって肉質が変化するのも特徴ですね。
藤岡 環境による肉質の変化というのは挑戦したい要素でした。ちょうど企画のほうからマグマをまとう案がきていたので試してみたんです。デザイン面でも、マグマが溜まりやすいような溝のあるデザインになってます。
辻本 そのデザインをもとに、質感の表現や部位ごとの武器の弾かれやすさなどのゲーム性も変わりますからね。
――『MH3(トライ)』では、部位破壊でモンスターの動きが変化することが多いですよね。
藤岡 『MH3(トライ)』では特に、モンスターの生態的な部分に対して納得のいく動きやゲーム性を意識したので、その流れかと。モンスターにスタミナの概念をとり入れたのも、そのほうがより自然に見えて、かつゲーム的な攻略要素にもかかわってくると思ったからですし。
辻本 部位破壊をしたらどうなるとか、スタミナが切れた際のモーションはどうだとか、ゲーム制作とグラフィックは密接にかかわる部分が多く、『MH』シリーズの制作の際は複数の部署の人間が行き来することが多いんですけど、特に『MH3(トライ)』のスタッフは多かった気が。
藤岡 デザインとゲーム性との関係ということもありますが、もっと単純に、デザインを見たほかの部署で閃きが生まれたり、その発想からさらにデザインが洗練されたりといったことも起こるんですよね。どの部署もいい物を作ることに集中しているので参考になることが多くて、必然的に行ったり来たりは多くなりました。
――アンコウをモチーフにしたように見えるチャナガブルも、そもそものコンセプトは違ったのでしょか。
藤岡 アンコウという外見的なキーワードではなく、『MH3(トライ)』におけるゲリョスのポジションというのが出発点です。ゲリョスって、閃光を放って、毒の液を吐いて、アイテムを盗んでと、かなりネタが豊富じゃないですか。水中での狩猟にも、そういうモンスターが欲しかったんです。初期には、そのコンセプトをストレートに描いた「水ゲリョス」なんて案もありましたよ。ゲリョスをベシャっとつぶしたようなヒラメっぽい感じで。デザイナーが何気なく描いただけなんで自然消滅しましたが、意外にかわいかったですね。あとは擬態をするモンスターのポジションかな。キノコに擬態するチャチャブーや岩に擬態するバサルモスがおなじみですけど、このキーワードは『MH』シリーズの初期からありまして、初代『MH』の際のラフスケッチにも擬態をするクマという案があるほどです。ちょうどアンコウというモチーフと水中での擬態という要素がかみ合ったので、採用となりました。
(その9に続く)
※インタビュー全文は電撃ゲームス 6月18日発売号に掲載されています。
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