【狩られ道B 05】轟鼓【虎鐘】(狩猟笛) 自分強化(その5) *
突然に、恐怖。
画面の左に、ランゴスタが見えました。まさか……まさかここでヤツに刺されて麻痺するなんてことはできません。ランゴスタはゆっくりと近づいてきます。やめろ! やめてくれ! 一瞬、狩猟笛を抜いてこいつを倒すという考えも頭をよぎりましたが、万が一、それに失敗したらと考えると、怖くて動けませんでした。視界の端で、バインドボイス【大】を終えた轟竜がゆっくりと猛ダッシュのかまえに入っているのが見えました。ランゴスタも、かなり近寄ってきています。
一瞬、刹那の決断。
僕は数歩前に出ました。運よく、ティガレックスの鼻面に吹っ飛ばされはせず、落ち着いて2発、捕獲用麻酔玉を投げることができました。「目的を達成しました」という文字が画面中央に表示され、カメラが再び眠りに落ちた轟竜を、なめ回すように飛び回っていました。安心して脱力した僕の耳に、聴き慣れた麻痺の効果音が聞こえました。ランゴスタに刺され、僕は麻痺してティガレックスの目の前で痙攣していました。それでも、それでもこうして、僕はティガレックスの狩猟笛でティガレックスを狩るという目的を果たすことに成功しました。無様な姿で倒れ込んだ自分と、なんとなく愛らしくさえ感じはじめたティガレックスの寝顔を眺めながら、ただひたすら、安堵だけを感じていました。
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